第85回公演  「あたしら葉桜」
 作:横山拓也(iaku)   演出:富永浩至


 スタッフ
  野口利香、清水 匠、小澤 厳、上村裕子、金田恵美、片寄晴則  

 キャスト
  母(あーちゃん)
:坪井志展  娘(美弥子):友里恵


上演にあたって

 

富永 浩至

 娘役を演じる友里恵は今回が初舞台となります。2020年に入団し、今年四年目になるのでもう新人とはいえないかも知れませんが、ご存知のようにその直後新型コロナウィルスが猛威をふるい、我が劇団の創立四十五周年記念公演も上演中止に追い込まれました。

彼女はその職業柄、コロナには特に気を遣かわなければならなく、全く稽古に出てこられない状況が長く続きました。この春、ようやく、そのコロナもインフルエンザ並みの5類になったこともあり、ようやく稽古に出てこられるようになりました。

そこで彼女の初めての舞台にと選んだのが、この「あたしら葉桜」です。初舞台に二人芝居というのは少々ハードルが高かったかもしれませんが、持ち前の頑張りで何とかこうして初日を迎えることができました。

 さて、この「あたしら葉桜」は、「紙風船」から九十年。岸田國士の今〜という企画で、「エダニク」の作者である横山さんが、岸田國士(くにお)の初期の名作「葉桜」を原案に、現代の母娘像を描いたものです。

娘の見合い相手を気に入らない母とその娘が、結婚を巡って取り留めのない会話を繰り広げる「葉桜」。それを横山さんが、どのように現代に置き換えたのか。そのことをよく分かって頂けるようにと、今回は本編の前にリーディングという形で「葉桜」を上演いたします。

大正時代と我々が生きている現代とで何が変わり、そして何が変わらなかったのか、皆様にも楽しんでいただければと思います。

 色々な試行錯誤を経た上での上演です。まだまだ至らない所はあると思いますが、お楽しみいただければ幸いです。

 本日は演研・茶館工房に足をお運びくださり、誠にありがとうございます

つぶやき

坪井志展 

 コロナ渦、配信でiakuの「あたしら葉桜」を皆で観ました。リーディングを行う岸田國士の「葉桜」を初めて読んだのはかなり前だった気がします。新しい環境に一歩踏み出すこの物語は、どこでも誰にでも起こりうる、起こっている、経験したであろう事だと思います。

 今回初舞台の彼女との共演、稽古を重ねる中、経験したこと等をカッコよく語り、実演していけたらよかったのですが、まだまだ自身絶賛抗い中であることに改めて気づかされました。

 誰でも起こりうると書きましたが、本日上演される母と美弥子(美彌子)のお話は、私と彼女の関係の中でしか作ることが出来ないものになりました。自分の価値観で生きる事にしんどさを感じながらも、無償の愛を感じる。絶望を希望に変えてゆけるくらいの根っこがあれば、流されないで生きて行ける。しんどいけれど、お互い向き合う事で楽には生きられないけれど、楽に生きたいと願う。

 稚拙ながらも、試行錯誤しながらの本番を迎えようとしています。私自身でさえ、初の事柄を彼女は初舞台で経験することとなりました。課題は山盛りでしたが、唯一楽しい稽古の日々でした。

 本日は、演研茶館工房に足を運んでくださりありがとうございました。

 

上村 裕子 

 先日、センセーショナルな映画をみました。(WOWOW視聴ですが)ちょっと衝撃的なシーンがあったのですが、意味がわからず…ネット検索をかけたら、俳優のコメント欄がでてきました。どんな気持ちで、ある場面を演じたのかという内容でした。

 ネタばれにもなるので、映画のタイトルと内容は控えますが、作品に対する思い、場面の理解が俳優の役作りに大きな影響がある事を改めて感じる機会でした。作家の思いを汲むという事もあるでしょうが、とても気持ちがざわざわしました。

 豊かな表現力を持つ俳優の演技はスゴイと感じましたが、若手のあまり好印象をもっていなかった俳優のDV男のくずっぷりが見事で、印象が変わりました。(映画の事が気になる方は、是非、個人的に声をかけて下さい。)

 さて、今回の作品に触れた時、時代背景という事を改めて考えました。想像の世界でしかない時代。今まで映画やテレビで少し見聞きした時代。客席にはどんな印象で伝わっていくのか…お客様の反応が楽しみです。2部構成の作品で、面白い試みだとも思います。

 本日はご来場、誠にありがとうございます。楽しんで頂けましたら、幸いです。

 

 野口 利香 

 近頃のニュースは心痛めるものばかりです。災害、虐待、動機不明の殺人、そして戦争。スポーツニュースでの日本人選手の活躍がせめてもの救いとなっています。この先世界はどうなるのかは考えたくない、どうしても目をそらしてしまう。いつしか、あえて先のことは考えずに、「今日すべきことをやる」という日々を過ごしています。

 その「今日すべきこと」にいつも芝居があります。そして「芝居のある日常」を失う事態にだけはならないで欲しいと願っています。

 今回は大正時代と現代の二つの作品を上演します。時代の違う作品ですが、共通しているのが母の娘を想う気持ちです。時代が変わっても、世の中がどのようなことになっても、それは不変なのでしょう。

 時代と雰囲気もかなり違う二組の母娘が登場します。それぞれの作品の良さを味わっていただけたら幸いです。

 本日は、劇場へ足をお運びいただき、誠にありがとうございます。

 

小澤 厳 

 本日は観劇に足をお運びいただきありがとうございます。今回で通算三回目の舞台に立たせていただくことになりました。頑張ります。

 今回の芝居は、タイトルどおり「殺人」というものが背景に描かれたものです。殺人行為というものは法的にも倫理的にも絶対に認められるものではありませんが、それぞれの殺人事件には様々な背景があり、色々な理由があることを考えさせられるものがあります。今回の芝居はさておき、世の中には殺人犯人に対し同情をせざるを得ないものもあることでしょう。

 今回の芝居を観終わって、皆さんが何を感じておられるのか非常に興味が湧くところです。別役実作品特有の「なんだこれ?」で終わる方も多いかもしれませんが、きっと何かが心の中に残ることと思います。

 居心地の悪い不条理の中にゆったりと身を委ねつつ、心の中で「うーん・・・」と唸っていただけることを期待したいと思います。

 ごゆっくりご観劇ください。

 

清水 匠 

 早いものでもう11月になりました。今回は初出演の役者もいるということで新鮮な気持ちで稽古に参加できると思いきや、例年同様に仕事上の都合で稽古にあまり参加できていない状況です。

せっかくの作品を台無しにしないよう、やれることをやるしかないという気持ちですが、果たしてどうなることやら・・・。私の出来はともかく、今回の公演でも今までと一味違った新しい演研の姿を見ていただけると思います。

 本日はご来場ありがとうございました。

 

友里恵

 観劇にお越しいただいた皆様、ありがとうございます。

 私は、今回の作品の稽古が本読みの段階頃から稽古に参加できておらず、11月の最初頃まで休んでおりました。そして久しぶりに稽古に参加した時は、既に通し稽古の仕上げ段階でしたが、「あたしら葉桜」の中で演じる役者のセリフに思わず涙を誘われてしまいました。

 母と娘の絆というものは、大正時代も今も全く変わらず、極めて強いものだということが感じ取れます。令和の時代にアレンジされた脚本は、関西弁のやりとりがとても面白く、芝居の中に引き込まれること間違いないと思います。どうか最後までゆっくりお楽しみください。

 

 

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